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ワークフローにおける承認ルートとは?申請〜決裁までのフロー・プロセスとよくある課題の解決方法

申請から決裁までを止めない承認ルート設計とは?業務スピードを高めるポイントと、よくある課題の解決策をわかりやすく解説します。

承認ルートとは、ワークフロー上で申請が上がってから最終的に決裁されるまでの流れです。

たとえば稟議書や経費精算など、社内での意思決定には複数の承認者を経由することが多く、そのルートをどのように設計するかで業務スピードや精度は大きく変わります。

しかし実際には、「承認者が不在で処理が止まる」「誰に回すべきか不明確」「承認が遅れて業務全体に影響する」といった課題が起きがちです。

本記事では、申請から決裁までの一般的なフローを整理しつつ、承認ルート設計のポイントやよくある課題の解決方法をわかりやすく解説します。

ワークフローにおける承認ルートとは

承認ルートとは、申請された内容がどのような経路をたどって承認・決裁されるのかを定めた流れのことです。企業活動においては、稟議や経費精算、契約関連などさまざまな申請が発生し、その正当性や妥当性を確認するために承認ルートが必要となります。

承認ルートを明確にしておくことで、誰がどの段階で判断を下すのかが可視化され、業務の停滞や不正のリスクを防ぐことができます。一般的な承認ルートには次のような役割が含まれます。

  1. 申請者
  2. 承認者
  3. 決裁者

まず申請者が、業務に必要な経費や契約などの内容を起案し、必要性や根拠を整理して承認依頼を行います。次に承認者は、申請内容の妥当性を確認する役割を担い、金額や規程との整合性、業務上の必要性が適切であるかを判断します。そして最終的に決裁者が、会社全体の方針や予算に照らして承認の可否を決定します。

このように、申請者が「提案する人」、承認者が「確認する人」、決裁者が「最終判断を下す人」として役割を分担することで、業務の透明性と正確性が確保される仕組みになっています。

承認フローとは

承認フローとは、申請から決裁までの具体的なプロセスを段階ごとに示したものです。単に承認ルートを定義するだけでなく、どのような手順で承認が進むのかを明確にすることで、業務全体を効率化できます。

一般的な承認フローは次の通りです。

  1. 起案
  2. 回覧
  3. 承認
  4. 決裁

起案の段階では、申請者が必要な経費や稟議などの内容を整理し、根拠や目的を明確にして承認を依頼します。続いて回覧では、その内容を関係部署や担当者に共有し、情報をオープンにすることで透明性を確保し、早い段階で修正点や不備を洗い出せるようにします。

次に承認ですが、承認者が内容を精査し、金額や規程との整合性、業務上の必要性を判断します。これらの工程を踏んで、最終権限を持つ決裁者が会社全体の方針や予算に照らして承認の可否を決定。承認された時点で、正式な効力を持ち業務が実行へと移されます。

承認ルートの基本的な種類

承認ルートには、以下4つの種類があります。

種類 役割 活用シーン
直線型
(直列型)
申請から承認、決裁までを順番に上位者へ回していく方式。1人ずつ承認を経て進む。 経費精算や出張申請など、段階的に上長や部門長の確認を必要とするケース。
並列型
(合議型)
複数の承認者が同時に確認・承認する方式。全員の合意が必要になる場合もある。 稟議書や契約関連など、複数部署の合意が求められるケース。
条件分岐型 金額や内容によって承認ルートが分岐し、基準に応じて異なる承認者に回る方式。 小口経費は課長まで、大口の契約は役員まで、といった金額基準のあるケース。
指名型 申請ごとに特定の承認者を選んで回す方式。柔軟に承認ルートを決められる。 プロジェクト単位で責任者が異なる場合や、臨時的な承認が必要なケース。

これらの種類による大きな違いは、「承認の流れが一方向か、同時進行か」「条件によって可変か、固定か」という点にあります。

そのため、自社に適切な承認ルートを考えるときは、「業務の性質」「意思決定のスピード」「関係部署の数」「リスクの大きさ」という4つの観点から考えると整理しやすくなります。

たとえば、日常的に発生する経費精算や出張申請など、比較的リスクが小さい業務であれば、直線型の承認ルートがシンプルで分かりやすい選択です。一方で、複数部署が関与する稟議や契約関連のように幅広い合意が必要な場合は、並列型を採用することで効率的かつ透明性の高い承認が可能になります。

直線型(直列型)

直線型(直列型)の承認ルートとは、申請が一人ずつ順番に承認者へ回っていき、最終的に決裁者に到達する方式です。流れが一方向に進むため分かりやすく、もっともシンプルな承認ルートの形といえます。

直線型(直列型)イメージ

並列型(合議型)

並列型(合議型)の承認ルートとは、複数の承認者に同時に申請が回り、全員または指定された承認者の確認が揃った時点で次のステップへ進む方式です。

直線的に一人ずつ承認するのではなく、同じ段階で複数人の合意を得られるのが特徴です。特に、部署をまたぐ案件や組織全体に影響する申請で採用されやすい仕組みです。

並列型(合議型)イメージ

並列型は、稟議書や契約承認、システム導入など、複数部署の関与が避けられない案件でよく採用されます。複数の視点から内容を精査できるため、リスク管理や透明性の確保に優れています。また、承認依頼を一度に回せるため、直線型のように「順番待ち」で時間がかかることを防げるのもメリットです。

ただし、承認者のうち一人でも対応が遅れると全体の進行が止まってしまいます。また、誰の承認が必須で、誰は参考程度なのかといったルールを明確にしないと、責任の所在が不明確になりやすいです。そのため、並列型を導入する際は「必須承認者」と「参考承認者」を区別したり、期限を設けるなどの工夫が必要です。

条件分岐型

条件分岐型の承認ルートとは、申請内容に応じて承認の流れが変化する方式です。たとえば金額の大小、契約の種類、関与する部署などの条件に合わせて承認ルートが分岐します。一定の基準をあらかじめ設定しておくことで、必要以上に重い承認プロセスを避けつつ、重要な案件には十分なチェックを行うことが可能です。

条件分岐型イメージ

条件分岐型は、経費精算や購買申請など、案件ごとにリスクや重要度が大きく異なる業務で多く採用されます。小規模案件は簡易ルートで迅速に処理し、大規模案件は上位承認を経ることでリスク管理を徹底できるのが最大のメリットです。無駄な承認を減らせる一方で、大きな金額や重要な契約については複数段階で慎重に判断できるため、効率性と統制をバランスよく両立できます。

一方で、条件設定が曖昧だと「どのルートに回すべきか」が不明確になり、却って混乱を招くリスクがあります。また、例外対応が頻発する業務では、分岐ルールの見直しや追加が必要となり、運用が複雑化する恐れもあります。

条件分岐型を導入する際には「金額基準」や「契約種別」など客観的に判断できるルールを明確にし、定期的にメンテナンスすることが不可欠です。

指名型

指名型の承認ルートとは、申請内容や状況に応じて、申請者が承認者をその都度指定できる方式です。他の承認ルートのように固定された経路ではなく、案件に適した担当者や責任者を柔軟に選べる点が特徴です。プロジェクト単位の業務や臨時的な依頼が多い環境で特に効果を発揮します。

指名型イメージ

指名型は、たとえば新規プロジェクトの立ち上げ時や、通常ルートに当てはまらないイレギュラー案件などでよく利用されます。特定の知識や責任を持つ人に承認を依頼できるため、実態に即した判断が可能です。固定ルートでは対応しきれない柔軟さを持ち、スピード感を求められる場面にも適しています。

指名型は承認者を自由に選べる分、ルールが曖昧だと「誰が責任を持つのか」が不明確になる点には注意が必要です。申請者の判断に依存するため、組織的な統制や公平性が損なわれる可能性もあります。そのため、指名型を導入する場合は「指名できる範囲」や「最終的に必ず経由すべき承認者」を明確に定めておくことが欠かせません。

承認ルートで発生しがちな問題

承認ルートは業務を正しく進めるための仕組みである一方で、設計や運用の仕方によっては問題が発生しやすいものでもあります。というのも、承認ルートは「人」を介したプロセスであり、担当者の不在や確認の遅れといった要因に左右されやすいからです。

担当者が不在のときに承認が進まない
ワークフローの進捗が把握しづらい
確認や承認に時間がかかる場合がある

これらは、承認ルートを適切に設計できていない場合や、システム上の可視化や代替承認の仕組みが整っていない場合に発生します。結果として、業務の停滞や意思決定の遅れを招き、組織全体の効率性に悪影響を及ぼします。

承認ルートを設計する際には、効率性と統制のバランスを取りながら、代替承認や進捗を可視化できる仕組みを取り入れることが重要になります。

担当者が不在のときに承認が進まない

担当者が長期出張や休暇で不在の際に、代替承認者が設定されていないと承認が止まってしまいます。申請が滞留し、業務の実行が遅れるだけでなく、契約や支払いが遅延するリスクも生じます。特に金銭や納期が絡む業務では、組織全体に影響を及ぼすこともあるでしょう。

たとえば、購買申請を課長が承認するルートに設定していた場合、課長が不在だと申請が滞留し、発注が遅れて納期に間に合わない可能性が高まります。特に製造業のように仕入れや部品調達のスピードが重要な業種では、業務全体に影響を与えかねません。

ワークフローの進捗が把握しづらい

紙ベースやシステムの可視化が不十分な場合、申請がどの段階にあるのか、誰が止めているのかが分かりにくくなります。ワークフローの進捗が不透明だと、申請者が状況確認に時間を割かざるを得ず、承認の催促や重複した問い合わせが発生します。その結果、組織内のコミュニケーションが煩雑になり、全体の業務効率が低下します。

営業担当が契約承認を申請したものの、部門長が確認中なのか、経理部に回っているのか、誰も状況を把握できないまま時間だけが過ぎてしまうケースは少なくありません。こうした状況では、営業担当が複数部署に進捗確認を繰り返すことになり、結果的に生産性や業務効率が下がります。

確認や承認に時間がかかる場合がある

承認者が多すぎる、あるいは承認ルートが複雑すぎる場合、申請が一つひとつの承認待ちで長時間滞留しやすくなります。また、承認者の業務負荷が高く、申請確認が後回しにされることも理由の一つです。それによって、重要な意思決定が遅れ、業務全体のスピード感を損なうだけでなく、取引先や顧客対応にも悪影響をおよぼしかねません。

たとえば、30万円の備品購入申請に課長・部長・役員の承認がすべて必要と設定されている場合だと、それぞれの承認が順番待ちになるため、実際の購入が大幅に遅れてしまいます。必要以上に承認段階を増やすと、スピード感を欠き、業務全体の機動力が損なわれる典型例です。

ワークフローシステムを導入するメリットや効果

これら承認ルートにおける課題を解決するためには、ワークフローシステムの活用が非常に有効です。

ワークフローシステムとは、企業内で行われる申請・承認・決裁といった業務プロセスを、紙やメールではなくシステム上で一元管理するシステムです。稟議書、経費精算、契約承認、休暇申請など、さまざまな手続きを電子化し、どこで止まっているのかをリアルタイムで把握できます。

システムを使うことで、申請は自動的に承認ルートに沿って回り、承認者には通知が届きます。さらに承認履歴や進捗が記録されるため「誰がいつ承認したか」が明確になり、以下のようなメリットを得られます。

申請や承認の進捗を可視化できる
確認や承認の手間が減る
オフィスにいなくても申請・承認できる
ガバナンスの強化につながる

ワークフローシステムを導入すれば担当者の負担が軽減されるだけでなく、組織全体のスピードと透明性が高まります。また、場所に縛られない柔軟な働き方を支えつつ、内部統制やコンプライアンスの徹底にもつながります。

申請や承認の進捗を可視化できる

ワークフローシステムでは、申請書が「誰の承認待ちなのか」「どの段階まで進んでいるのか」を管理画面上で確認できます。そのため、担当者が状況確認のために上司や他部署へわざわざ問い合わせる必要がなくなります。

たとえば、営業部が契約承認を申請した際、以前は「経理にあるのか?上司が見ているのか?」が分からず電話やメールで確認していたのが、システムなら画面上で「経理部長の承認待ち」と表示されます。

組織全体としても進捗の停滞ポイントが見える化されるため、意思決定のスピードアップや業務の効率化につながり、経営層にとっても業務の透明性が確保しやすくなります。

確認や承認の手間が減る

ワークフローシステムでは、承認依頼が自動で通知されるため、紙の書類を回覧したり、メールで逐一依頼する必要がなくなります。承認者はシステム上で簡単に内容を確認して承認でき、担当者も差し戻しや再提出のやり取りを効率的に行えます。

出張旅費を精算する場合、以前は申請書をプリントして上司の机に置き、さらに経理に回す必要があったのが、システムなら申請と同時に承認依頼が自動送信され、承認者は出張内容と金額をすぐに確認して承認ボタンを押すだけで済みます。

結果として、現場の作業時間が減るだけでなく、企業全体としても申請から決裁までのリードタイムが短縮され、各所における業務のスピード感が向上します。

オフィスにいなくても申請・承認できる

クラウド型のワークフローシステムを利用すれば、パソコンやスマートフォンからアクセスできるため、出張先や在宅勤務中でも申請や承認が可能になります。担当者は時間や場所に縛られずに対応でき、承認が滞るリスクを減らせます。

時間や場所が限定される方法の場合、たとえば出張中の役員に紙の稟議書を回すと数日間承認が止まってしまいます。対して、システムならスマホで内容を確認してその場で承認できるため、翌日には業務を進められます。これにより、リモートワークや多拠点での勤務環境でも業務が滞らず、組織の機動力が高まるでしょう。

組織としてもテレワークや多拠点勤務といった多様な働き方を支援できるため、生産性向上と柔軟な働き方を同時に実現できます。

ガバナンスの強化につながる

ワークフローシステムは、誰がいつ承認したのかといったログを自動的に記録します。これにより不正や承認の抜け漏れを防ぎ、監査や内部統制への対応も容易になります。

ある購買申請で「本来は部長承認が必要な金額なのに、課長の承認だけで処理されていた」などの事態が発生していた場合でも、ワークフローシステムなら、自動的にルートが設定されているため想定外の事態はほとんど起こりません。

また、「誰がいつ承認したのか」をログからすぐに確認できるため、担当者にとっては手続きの透明性が高まり安心して業務を進められ、企業全体としては法令順守やコンプライアンス面でも安心感が大きいでしょう。

『Hi-PerBT ワークフロー』で申請・承認業務を効率化

承認ルートの停滞や進捗の不透明さに悩む企業には、『Hi-PerBT ワークフロー』の導入がおすすめです。

申請から承認・決裁までの流れをシステム上で一元管理でき、代理承認や進捗可視化、ワークフローで起こりがちな課題をしっかり解決する機能が充実。申請書の進捗状況を確認できるのはもちろん、申請履歴を簡単に検索できるため過去の内容を探す手間も省けます。

さらに、標準機能でカバーできない部分はカスタマイズも可能。将来的に組織や業務が変化しても、運用を止めずに対応できる拡張性も大きなメリットです。

『Hi-PerBT ワークフロー』は、導入前に安心して試せる無料のオンライン試用環境を用意しています。自社の業務フローに合うかどうかを実際に体験できるので、まずは試して操作性や効果を確認したうえで、本格導入を検討してみるとよいでしょう。

まとめ

ワークフローにおける承認ルートの基本から、申請から決裁までの具体的な流れ、さらに直線型・並列型・条件分岐型・指名型といった代表的な承認ルートの種類と特徴を解説しました。

承認ルートは、業務の透明性やガバナンスを確保する一方で、担当者不在による停滞や進捗の不透明さ、承認に時間がかかるといった課題が生じやすい仕組みでもあります。こうした課題を解決するためには、適切なルート設計に加え、進捗の可視化や代理承認機能を備えたワークフローシステムの活用が有効です。

自社の業務特性や意思決定のスピード感に合った承認ルートを整え、効率性と統制を両立し、組織全体の生産性向上をめざしましょう。